卒業


風が少し強い日。
その日、少年は卒業を迎えた。

少年にとって卒業なんてどうでもよかった。
「別れ」「旅立ち」「感謝」そんな物はまったくなく、
ただの「終了」だった。


卒業式はもちろんの事、
最後のSHRでの担任の話も軽く聞き流す程度だった。
終いには涙を流す生徒もいた。

少年は反吐が出るようだった。


SHRが終わると少年は逃げるように教室を出た。
もうここには二度と来ないだろうと思いながら
校門を出ようとした瞬間、少年の目の前を
一枚の桜の花弁が風に乗って横切った。


ふと、振りかえると
校庭の片隅に立ってる桜の木が
校庭中に花弁を撒き散らしていた。
まるで絵に描いたような風景だった。


それを見た少年は校門に唾を吐き捨て、
笑顔でその学校を後にした。